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BUKATSUDO リトウ部

石垣島に住んでみて、自分の大事なことが見えてきた/2月17日開催「出張リトウ部」イベントレポート③

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「島の高校生と考える離島の2拠点生活・ロングステイの可能性〜石垣島編〜」三回目のレポートは、東京から石垣島に移住した、元地域おこし協力隊・現石垣市集落支援員の青木省悟(あおき・しょうご)さんが語る、石垣島での移住ライフについてお届け。

元々は、都内でエディトリアルデザイナーとして活躍していた青木さん。どんな思いで石垣島に移住し、島でどんな人々と出会い、どんな暮らしを送っているのでしょうか。

トークイベント当時は「地域おこし協力隊」として活動していたため、以下の記事内では地域おこし協力隊隊員の青木さんとしてお話を紹介します。

 

10年の区切りをきっかけに、地域おこし協力隊に転身

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青木さん

こんにちは!石垣市の地域おこし協力隊をしている青木省悟(あおき・しょうご)と言います。今回は、地域おこし協力隊として、移住者として、どういった気持ちで、どういった活動をしているか、そして、どういった気持ちで移住して、実際住んでみてどうなのかということについて、お話させていただきます。 

まず、自己紹介。昭和56年の5月8日生まれの37歳で、今年38歳になります。出身は神奈川県の南足柄市というところで、諸説ありますが金太郎のふるさと、と言われているところですね。

それまで10年間、原宿にあるデザイン会社で主にファッション誌などの、デザインをする、エディタリアルデザイナーをしていました。ちょうど10年というのを区切りにしたいと思ったとき、沖縄に住んでみたいという思いもあり、また仕事の幅も広げたいと思っていたところ、たまたま見つけた石垣市の地域おこし協力隊の募集を見つけて、応募して、採用していただきました。

志望動機を簡単に言うと、仕事の幅を広げ、起業したい、というところですね。あと、沖縄の文化や風土に興味があって移住したいという気持ちもあり、移住させていただきました。

前職のスキルを活かしながら、北部地域活性化に従事

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青木さん

地域おこし協力隊をわかりやすく言うと、青年海外協力隊の日本国内版みたいな感じで、東京とか大阪、福岡など都市圏に住んでいる若者に対して、人口減少地域や高齢化が進んでいる地域に行って、住んで、地域づくりのお手伝いをしてもらうことですね。隊員は、地域ブランド化や、地場産品の開発、販売、プロモーションとし、市住民の交流の支援、農林水産への従事、住民生活移住のための支援をやっていきます。

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青木さん

僕のミッションは、上野さんが紹介していた北部地域の活性化のお手伝いです。地域資源を活用した地域ブランドの質の向上、地域活動、公民館行事などの参加。また、そういうことの情報発信。自然が多いので農産物の栽培、加工、及び、販売、開拓、環境の保全などの協力分野がありますが、僕は主に、「地域活動の参画」「情報発信」というのが、メインでやらせていただいています。

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青木さん

そのなかでやっている活動が、石垣市を含む農村集落活性化協議会。五か年事業の補助金が入っている事業で、僕がその事業の三年目から地域おこし協力隊として加わりました。協力隊の任期が3年なので、ちょうど任期が終わるまでの間、たとえば、北部にある3つの祭りをまとめた三大祭りというのを開催したり、13集落ある地域の紹介をしたマップを制作したりしています。また、畑おこし講座というのをやって、農作物の栽培についても勉強していこう、ということもやっています。

地域・行政と向き合いながら幅広く活動

青木さん

石垣島の北部地域は、13集落からなります。そして僕はいま伊原間という集落に住んでいまして。ドローンで撮るとこんな感じのところですね(スクリーンに地図が表示される)。これが僕の家です。こんな感じの赤瓦のおうちを紹介していただいて、2018年の4月からちゃんと住みはじめました。

リトウ部庄司

それまでは、どこか別のところに住んでいたんですか?

青木さん

1年目は、ダイビングショップの店舗スタッフさんが住んでいた、スタッフルームみたいなところを借りて住んでいました。せっかく活動するんであれば住んでくださいっていうことで、いまの場所を紹介していただいて。

その他に、北部地域の福祉や観光に関わることを、なるべく地域の人の声を聞いて、その声を行政に届けたりするような仕事をしたり、空き家バンクの紹介や移住相談会、移住体験ツアーのサポートなどもさせていただいています。

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青木さん

その他、前職がデザイナーだったということもあって、広告ツールをお願いされることが多いですね。今、農政経済課というところに所属しているんですけれども、課の垣根も飛び越えて、できる限りいろいろお手伝いをさせていただいてます。

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青木さん

こちらのスライドは、協力隊の活動記録みたいなもので、活動が1年間終わったころ、色んな活動にか関わっているけど、「具体的に何をやっているの?」というのが説明しにくい部分もあったりしたので、数字化できそう部分を表してみました。もらった名刺の数とか、Instagramの投稿数とか、どのぐらいフォロワーが増えたとか、行ったイベントの数などですね。

リトウ部庄司

Instagramの投稿数がすごいですね。これは個人としての活動ですか?

青木さん

一応、個人の活動として、やっております。

あとは、一年目に作った制作物ですね。パインのPRグッズ、お祭りのスタッフのTシャツ。協力隊の1年目が市政が70周年のタイミングで、それを記念したバッジをつくりたいということもあったので、「70」を石に見立てて石垣、というロゴをつくらせていただきました。幕をつくったりとか、「統計石垣」という冊子の表紙を作ったり。市役所にある資源循環設備のといって、生ごみを再利用する取り組みをやっているんですけれども、それをPRするためのPRディスプレイを考えたりと、いろいろさせていただきました。

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青木さん

八重山には、地域紙が「八重山毎日新聞」「八重山日報」っていう2紙があります。地域のことや、ちょっとしたことでもすぐ新聞に載るので、何かあったときは、新聞社さんを呼んで、取材して頂き、掲載すると「何かやってるね!」と地域の方から声をかけてもらえますね。、昨日の八重山毎日新聞では、「北部地域の畑おこし講座で作った野菜を北部地域の学校に給食として地産地消で卸す」という事業を大きく紹介していただきました。

あと、失敗や反省点ですね。街から家までだいたい30㎞ぐらいあるんですけど、1年目は毎日、市役所まで通っていました。もともと僕はペーパードライバーで運転ができなかったんですけど、だんだん慣れてきます。で、慣れてくると眠くなるんですね(笑)。とくに、いろいろイベントが立て込んでくると、もう、1日2往復することもあって、そういうときもあって、2月に2回、自損と物損、事故にあってしまいました。 あと、諸々、反省点は多いです。

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青木さん

今年度は、先ほど出ていた、アースナイトデーのサポートの他、新たに小さな拠点ネットワーク形成事業といって、「人口が減少して不便になっている地域でも、拠点になりうる場所を作って、その地域の人たちの生活を少しでも便利にしていきましょう」ということで、買い物支援の移動販売車事業を行っています。そして、野菜の直売所の修繕ということにも取り組んでいます。今年1年もいろいろ、課をまたいでお仕事させてもらいました。

島の中で人と人とが出会う場所づくり

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青木さん

あとは、コミュニティづくりという意味では、こういった活動を通して出会った人たちや、島の子たちが取り組んでいる、「八重山ヒト大学」という市民大学を2018年の9月からスタートさせています。島出身の子が、島に住むことに自信を持てるようなものを紹介しよう、ということで、いろんな人にインタビューをしてブログに載せています。
こちらは、先ほどの上野さんも参加している、石垣市公営塾のロゴとホームページですね。こちらも作らせていただきました。

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青木さん

こちらが、2018年2月15日から本オープンした新たなコワーキングスペースの市民会館2階にある、デッドスペースを有効活用したもの。「島の場」というものを作って、そのロゴやそこから発信する情報誌として、皆さんのところにお配りしている、『あいかる』を作らせてもらっています。

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青木さん

こちらは、先ほどご紹介した移動販売車のですね。いまデザインを考えているところです。この「ほうぼう」っていうのは、2つ意味があって、「方々回って、販売する」っていうのと、昔アメリカにいたらしい「ホーボー(Hobo)ってスタイルの労働者」という意味。

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リトウ部庄司

何を販売する予定なんですか?

青木さん

北部地域は距離が遠くて、バスが1日3便しかないんですよ。おじいさん、おばあさんの買い物の支援という形で、保存がきくものは缶詰とかは常備して販売し、買い物の代行や、注文を受けたものを販売しようかなと考えてます。

あとは、こういう「モチベーションの変化グラフ」も作ってみました。すごく正確なわけじゃないんですけど、あると面白いかなとおもって作ってみました。

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リトウ部庄司

赤いのが気になりますね(笑)。赤いところが。

青木さん

ここはピンポイントで失恋があったり、あと、遅れてる活動に対して酔っぱらいながら文句を言われたことがあってへこんだりとか。

リトウ部庄司

ちょっと落ち込んだ時期ですね。

移住してみて本当によかった

青木さん

移住してよかったことはいっぱいありますが、まずは一番は憧れていた沖縄に住めたっていうこと。そして、自分がやりたいと思っていたことをずっと思い続ければ、実際にできるんだな、ということを実感できたことですね。そういう経験をして、前向きになれました。あとは、石垣島は注目度の高いところなので、今まで忘れていた友だちが久しぶりに合いに来てくれたり、新しい出会いや繋がりが生まれたりして、とてもよかったです。

もう1個が苦労したことでいうと、良くも悪くも、人との距離が近いっていうのがありますね。東京の生活に長く慣れていると、公民館行事の手伝いや、草刈りみたいなことには参加している必要もあります。そこに参加していかないと、「あいつ来ないな」となってしまう。特に僕は、地域おこし協力隊という立場なので、いろいろな集落に行かなくてはならないのですが、13集落をすべてカバーするってことはまず無理なので、薄くまんべんなく行くようにしています。

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リトウ部庄司

東京にいらっしゃるときは、イベントや地域の行事には出かけるタイプだったんですか?

青木さん

東京のときは、デザイン会社のなかで結構みっちり仕事をしているような状況が続いていました。住んでいるところも、恵比寿とか、広尾に住んでいて、会社までは自転車で通っていたので、本当にプライベートか仕事か、っていう感じでしたね。久しぶりに、子供のころは、公民館行事でお祭りにもでかけたりしていましたが、東京のプライベートに覆われた空間に慣れてしまうと、移住したときに人との距離みたいなところで苦労するかもしれません。

移住して約2年、実際に住んでみないとわからないことがたくさんありました。良い点、大変な点を天秤にかけつつも、なぜ沖縄に来たのか、何が自分にとって大事なのかが、住んでみて、わかりました。

結果、私は移住して本当に良かったと思います。活動期間は残り1年ほどですが、地域のみなさんの協力もあり、活動終了後も、定住して暮らしていくイメージがわいてきました。ただ、石垣島のスケールだけで仕事をしていった場合に、収入のことを考えると難しい点もあると思いますので、八重山、沖縄、東京、地元足柄など、ほかの拠点との繋がりを新たにつくりながらも、仕事をしていければと、考えています。(了)