島の高校生が見出す石垣島のダイバーシティ/2月17日開催「出張リトウ部」イベントレポート①
リトウ部のイベント、「島の高校生と考える離島の2拠点生活・ロングステイの可能性〜石垣島編〜」。離島経済新聞社、石垣島の高校生と地域おこし協力隊、そしてリトウ部が一堂に会しトークセッションを行いました。
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リトウ部部長の鈴木、副部長の庄司が司会進行をする中、登壇していただいたのは以下の4名。
NPO法人離島経済新聞社からは、編集長の鯨本あつこ(いさもと・あつこ)さん。離島経済新聞社の理事でもあり、サイバー大学IT総合学部教授の勝眞一郎(かつ・しんいちろう)さん。石垣島の高校、八重山高等学校三年の上野優祐(うえの・ゆうや)さん。東京から石垣島に移住した、地域おこし協力隊の青木省悟(あおき・しょうご)さん。
それぞれ異なる視点から見た、石垣島での「離島の2拠点生活・ロングステイの可能性」について語っていただきました。
島の高校生、「ダイバーシティ」をテーマに地元を語る
今回ご紹介するのは、八重山高校の上野さんが「石垣島のダイバーシティ(多様性)」という切り口から語る、離島の2拠点生活・ロングステイの可能性。
石垣市の観光人材育成事業・高校生プロジェクト「Chura☆I」への参加、アルバイトをきっかけにした移住者との交流、島内で新たにできたコミュニティへの参加などを通し、まさに島内の多様性に触れている上野さん。
石垣島のダイバーシティについて、「島の北部地域」「移住者」「コミュニティづくり」の三つのトピックを元に話してくださいました。
上野さん:
自分は八重山高校三年の上野優祐と言います。名字が全然沖縄っぽくなくてごめんなさい。
でも、お父さんも石垣の人で、自分も石垣生まれの石垣育ちで、お母さんは西表島の人。もうバリバリの島っ子です。
最近、3年以内ぐらいに石垣島に来たことがある方ってどれくらいいますか?・・・・・・ありがとうございます。石垣島もどんどん変わってきていて、最近は新しい空港もできました。去年はドン・キホーテもできました。すごく大きなドン・キホーテで、台湾からのの観光客向けとは言われてます。
また、自衛隊配備に関することで石垣島がゴタゴタしていて、この賛否を問う署名運動も行われています。自分も署名したんですけど、結局、却下されちゃって、自衛隊は配備されるらしいですね。それで、自衛隊の受け入れみたいなことも含めて、新しい建物がどんどん建っていて、10年ぐらい前の街と比べると、めっちゃ変わっています。
上野さん:
早速、本題です。今日のトピックはこの3つ。全体的なテーマとして、「ダイバーシティ」っていうのをテーマにしています。最近、ダイバーシティっていう言葉を知ったので、ちょっと使ってみたくて(笑)。
ダイバーシティというのは多様性っていう意味。島の中にある多様性を、3つのトピックに分けて紹介していこうと思います。
1番目は、石垣島は南部地域だけじゃなくて北部地域も面白いよっていう意味での多様性。2番目の「移住者に聞いてみた」っていうのは、島の人だけじゃなくて、外からやってきて島で暮らしているよ、っていう多様性。3番目のコミュニティづくりについては、島にはいろいろな人がいるんだよ、という意味での多様性です。
自然を体感できる島の北部地域
上野さん:
まず1番目の、「石垣島の北部地域」について。
島の南部の市街地はすごく発展していて、自分通う八重山高校も南部の市街地にあります。学校はうちから100メートルぐらいの、めっちゃ近いところ。石垣の学校だけなんですかね?お昼休みになると、みんな一旦家に帰って、家でごはん食べて、また学校に戻って授業を受けます。
リトウ部庄司:
みんな割と近いところに住んでるんですか?
上野さん:
遠い人もいるんですけど、遠い人は、学校の近所の食堂で食べたり、家からお弁当持ってきて食べたり、という感じですね。
リトウ部庄司:
けっこう自由なんですね!
上野さん:
この写真は、僕の通う八重山高校から撮った景色。写っているのは学校がある市街地で、めっちゃ普通に発展している街ですね。
石垣島北部の活動では、石垣市の観光人材育成事業高校生プログラム「Chura☆I」(ちゅらい)っていうものがあって、僕は参加できなかったのですが、離島経済新聞の鯨本さんと一緒にパンフレットづくりなどをしていました。
上野さん:
石垣島の北部は、市街地と比べると、すごい自然豊かです。「サバニ」という、金属を一切使わず、植物や木だけで組み立てた船があって、それを活かした観光業が行われています。サバニを作っている「吉田サバニ造船所」というところがあって、そこでサバニに乗ることができます。
サバニは風の力で進むので、自然と一体化できる観光できるのですごい人気。ちょっと天気が悪い日はサバニに乗れないこともあるのですが、それでも「今回は乗れなかったけど、また次回は乗りたいからもう一回石垣島に来る」という観光客もいたりします。
上野さん:
次に紹介するのは、これも島の北部地域で行われた「アースナイトデー」というイベントです。このイベントは、北部地域の星空をテーマにしてるイベント。2つのエリアがあって、一つはイベントエリアで、もう一つがキャンピングエリア。その二拠点間は、東南アジアの乗り物「トゥクトゥク」で行き来できます。どちらのエリアでも時間ごと色々なイベントが行われていて、夜までの間、すごい楽しく過ごせます。
上野さん:
キャンピングエリアでは、バーベキューのワークショップ等が行われているし、イベントエリアでは、トートバックをつくるワークショップや、コーヒーのワークショップなどが行われています。
また、久宇良地域というところでは「おっかあ市」という、島北部の農産物や植物を売る市があります。夜になると、アースナイトデーのイベントエリアではアーティスト呼んだライブも行われましたし、キャンピングエリアではヨガが行われたり、ファイヤーダンスのパフォーマンスもおこなわれました。
上野さん:
夜までの間、本当に暇することなく楽しめるイベントです。夜は、キャンプしながらみんなで星空を見ることができました。
石垣島は、「国際ダークスカイ協会」というところから、星空保護区に認定されています。日本で初、アジアで2番目、世界で59番目に保護区に認定されました。星空は、日本でも数少ない夜の観光に繋がるそうです。渋谷も、現在夜の観光に力を入れているということなのですが、それに負けないぐらい星空がすごいです。
「もっと石垣島で過ごしたい」から始まった移住
上野さん:
2番目は、「移住者」について。
実は僕は、さっき皆さんに食べていただいたジェラートを作っている、「石垣島ミルミル本舗」のお店でバイトしています。この写真は高台にある本店ですが、僕は「南ぬ島 石垣空港」の中にある、石垣空港店で働いています。観光の方がたくさん来るので、すさまじく忙しいです。
上野さん:
ここで販売しているのは、島で採れたものだけをを使って作るジェラートです。
僕がバイトしている石垣空港店の店長している方も、移住者の1人。その方にインタビューさせていただきました。
ヨウコさんという女性の方で、いま35歳。20歳のとき一人旅のために貯めた100万円を使って石垣島にやってきて、1か月で100万円を使い切って帰る予定だったみたいです。そのはずだったのが、島で1か月過ごしたころ、「まだ石垣島にいたいな」と思い、ここで働き始め、気づいたら15年経っていたそうです。
すごいですよね。石垣島にいる時間は、自分とそんなに変わらないんですよね。
リトウ部庄司:
移住者だったんですね!
上野さん:
なぜヨウコさんが石垣島ミルミル本舗石垣空港店の店長をしているかというと、石垣島ミルミル本舗の社長の息子さんと結婚した、という経緯があったんです。それで「石垣島にやってきたとき、どうやって地元とコミュニティをつくったんですか?」と質問してみました。
店長のヨウコさんはすごい気さくな方で、人と会話することが好きな人で、コミュニティを作っていくのがすごく上手いんです。で、どうやってコミュニティを作っていったかを聞いてみると、「居酒屋、民宿、barなど、たくさんの人に出会えておしゃべりできるところにいって、コミュニティを広げていった」そうです。
移住して大変だったことは、アパートを借りるための、島在住の保証人探し。当時2人必要だったらしかったです。ヨウコさんは、いろいろな縁があって、見つけることができたそうです。最近では保証会社があるので、今は比較的簡単に借りられそうですね。
上野さん:
ヨウコさんには、小学1年生のお子さんがいます。仕事も充実していて、すごい大変だけど、楽しいと言っていました。僕も一緒に働いていて、楽しそうに過ごしているのを感じるので、ヨウコさんは移住者のなかでも成功している方なんじゃないかなと思っています。
「移住を考えている人へひと言」ということで聞いてみると、「石垣島はアットホームでとても住みやすいです」と言っていました。
実は本当はもっと長いのですが、ヨウコさんの移住への感想をひと言読ませていただくと、「石垣島に住む島内出身者の方々は、私のような移住者を快く受け入れてくださっています。また、その魅力に惹かれた私たち移住者も、島の方々から頂いた温かさを、新たな移住希望者へ引き継いでいきます」と言っていただけました。島の人として、僕もすごく嬉しいひと言でした。
島の人たちと一緒に話ができる場所
上野さん:
3番目は、「コミュニティづくり」について。
たとえば店長のヨウコさんは、すごい気さくな方で、積極的にコミュニティを作っていました。でも、そうではない人は、どうやってコミュニティを作るのか、というところです。
先ほども少し紹介のあった「Ishigaki-Con(石コン)」というものがあります。僕の塾の先生でもある住吉さんという方が、石コンの元になった、鎌倉で行われているカマコン(Kamacon)の企画した方。住吉さんが石垣島に移住して、「石垣でも何かやろう」ということで石コンが始まったそうです。
石コンは、プレゼンターがいて、それぞれが、自分がやりたいことや考えていることについて会場の皆さんにプレゼンし、会場にいる人たちから意見やアドバイスをもらいます。僕もこれに参加しました。
上野さん:
この写真右側の方は、石垣島の子ども劇団で『オヤケアカハチ』という舞台をやっている方。
島の子たちの中には、伝統芸能がすごい上手な子がいるんですけど、島を出ていってしまうこともあるし、島に戻ってきても、そのスキルを活かす場が無かったり、伝統芸能だけで食べてい食ことができなかったりします。じゃあどうしあら、この島での伝統芸能を活かして生活していけるようになるのか、ということをプレゼンしていて、それに対してみんなでアイデア出しをしていきました。
写真左側の方は、紙芝居方式でプレゼンをしていました。「島でゲストハウスや民宿をやりたいけど、どうすればいいのか」ということについて話していました。
上野さん:
実は、僕もプレゼンしました。いま、友だちのダイチくんと映像制作をしていて、そのヒントが欲しくてプレゼンさせていただきました。プレゼンの後、みんなでブレインストーミングするんですけど、高校生のつたないプレゼンでも、みんな集まってきてくださって、いろいろアドバイスをして下さいました。中にはドキュメンタリー映像制作している方がいて、その方からもすごいたくさんアドバイスをいただきました。
上野さん:
「参加したらすごいしっかりプレゼンしなきゃいけない」という感じではなく、ただ聞きに行きたいとか、面白そうな人がいるから行ってみたいとか、発言はしなくても大丈夫という、ハードルが低い印象がありました。なので、コミュニティづくりの場としてはすごくいいかなと思っています。
「コミュニティの場」だけではなくて、移住者と島民、Uターンしてきた人たちの交流の場にもなっています。
自然と文化が混ざる、多様性あふれる場所
上野さん:
最後に、まとめです。
石垣島は、ダイバーシティがあり、いろんな人たちがニーズに合せて住み分けることができると思います。島の北部地域はやっぱ自然が多いので、自然が好きな人は北部にいますし、それなりにインフラが整っている環境で石垣島に住みたい人たちは、市街地に住んでいます。市街地でも、それなりに自然があります。
あとは、石垣島自体、開拓移民の歴史もあります。そもそも島に住んでいる人たちは、元々は宮古島から来た人、沖縄本島から来た人、奄美から来た人、という風に混ざっていて、歴史を紐解いていくと、色々な文化が合わさっているそうなんですね。石垣島は八重山諸島の中に属していて、西表島や竹富島、黒島、与那国島などほかの島もあるので、そこでもどんどん違う文化が生まれていっています。
外国人観光客もたくさん来ますし、都内から来る人たちも多いので、いろんな人に溢れて、いろんな文化があって、いろんな言語も交わっていて、すごい多様性に溢れているところだなと思います。
なので、皆さんがもし移住したいな、どこか行きたいなと思ったら、とりあえず石垣島に来れば、なんでもできるんじゃないかと思います。
以上で終わります。ありがとうございました。
※上野さんからのお話は、ここまで。
生まれも育ちも石垣島の上野さんが語る、島の「ダイバーシティ」についてのお話でした。
次回の「イベントレポート②」では、離島経済新聞社と鯨本さんと勝さん、そしてリトウ部とのクロストークの様子をお届けします。