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BUKATSUDO リトウ部

【後半】繋がりと、人を頼る力を大切にしたい/2月17日開催「出張リトウ部」イベントレポート②

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「島の高校生と考える離島の2拠点生活・ロングステイの可能性〜石垣島編〜」二回目のレポートは、NPO法人離島経済新聞社とBUKATSUDOリトウ部のクロストーク後半の様子をお届けします。

 

後半では、実際に離島での二拠点生活やロングステイを行った時に心掛けておきたいこと、島の人との関り方、そして島独自の楽しみ方について話しました。

 

クロストーク前半の様子は、こちらからご覧いただけます。

 

二拠点だからこそ大切にしたい「地元との繋がり」

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リトウ部鈴木

 

二拠点、ロングステイというところで、僕は「交通費・滞在費・地元との繋がり」の3点が重要かなと思ってます。

 

交通費については、僕が石垣でも二拠点できるなと思ったのは、直行便があることと、ある程度のLCCが飛んでるというところ。アクセスのしやすさもあるので、東京からいろいろな人を連れて来て面白いことできそうだな、とうのもありました。

 

滞在費は、二拠点目の家賃を払い続けるだけでなく、何かの場所にして、自分が使わないときは誰かに貸し出したりすることで、少しでも経済的に赤字がないようにする工夫も必要かなと思っています。

 

地元の方との繋がりという点では、ただ行って観光みたいに帰って来るというよりは、地元と繋がることで、より暮らしも面白くなりると思います。あと、そこから仕事が発生したり、島の活動にも関われることがあると思いますので、地元との繋がりの部分も非常に重要視しています。

 

鯨本さん

 

島で二拠点生活をしようとしても、最初から勝さんみたいに「月に2週間ずつ行きます!」という人はなかなかいないと思うんです。しかも、400もの島がある中で、どの島がその人に適しているかは分からない。「どの島だったら行けるんだろう?」みたいになると思います。

 

『季刊リトケイ』のリモートワーク特集でも、離島地域のコワーキングスペースやシェアオフィスを紹介していますが、「外から来ている人も働けますよ」という場所が表立って紹介されている島は、ものすごく行きやすいんです。Wi-Fiスポットもあるので、島でも仕事ができる。こういう島にゲストハウスなどがあれば、なお良しですね。

 

滞在のための物件探しは、ものすごい大変です。石垣島宮古島などの大きめの島には、不動産屋さんもありますが、小さい島には不動産屋さんはほぼありません。

 

空き家はたくさんあるんですけど、いろいろ事情があって貸せない状態だったりする。なので、最初はゲストハウスや民宿などで、気軽に使えるような場所を見つけておくのが良いんじゃないかと思います。

勝さん

地元のつながりの問題でいうと、自治会に関しては、奄美と藤沢の二拠点する前は、藤沢の自治会の広報をやるなど、どっぷり関わっていたのですが、月の半分いない、ということになると、藤沢に「いない扱い」になってしまう。奄美でも、集落行事や草刈りなど自分がいるときは参加できるのですが、いないことも多いので役員にはなれない。そういうコミュニティ問題は、二拠点生活する上では、解決しなければいけないところですね。

鯨本さん

自分は私の地元(大分)と夫の地元(沖縄)に家があって、東京に会社があるので、あちこちウロウロとしていますが、住民票は大分県日田市。住まいは、実家の隣にある空き家に住んでいるので不在の日が多くても、自治会問題はクリアしやすいです。私がいなくても他の家族がいるので。

そう考えると「家族ごと移住しちゃって、自分が二拠点生活する」場合は、自分が稼ぎ頭であればできるかもしれませんね。田舎や離島では、地元の人たちとの地域活動には欠かさず参加したほうが良いですから。

島の人を頼る力

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リトウ部庄司

元々リトウ部も、単純に「島が好き」という思いからの観光地巡りから始まったんですけど。「どうやら、ガイドブックに載っていないようなところでの出会いや景色が面白いぞ」って気づき出してからは、いわゆる観光地じゃないような島にも足を運んでみるようになりました。

私は一時期本気で「小笠原に住みたい」と思ったときに、その場所になんの縁もゆかりもない人間のランクってのは、すごい低いんだなと思いました。投票日には、ちゃんと父島に行かなきゃいけないですし。島で暮らしていくときの、人脈づくりや、新しい土地での根の張り方みたいなものはありますか?

勝さん

基本は、やっぱり頼る力。どんだけ人に頼るか。「自分でなんでもできますよ~」というふうにしていると、ずっと孤立してしまいます。「お願いできますか?」って、相手にまず借りをつくる力があると、相談しに行ったときに、相手もこちらに歩み寄ってくれる。で、それに対して、自分もお返しをする。

リトウ部庄司

なるほど。

勝さん

「あいつは俺が世話してやっているんだ!」ぐらいな人を、どれだけ作れるか、ですよね。

リトウ部庄司

島の人たちって本当に優しいというか、いい意味ですごい絡んでくださるので、そこで「あ、大丈夫です」とか言っていると、孤立してしまうんですね。

勝さん

そうです。どんどん頼ってみましょう。

リトウ部庄司

テツさん(リトウ部鈴木)はどうですか?島の人たちとの絡み方というか。

リトウ部鈴木

ほんと、頼ってますね。Zuppa Ishigaki 離島ターミナルの物件を借りるのも、僕1人で行ったら絶対無理なので、紹介してもらったり、ちゃんと話して、「こういうことやりたいんです」って伝えたり。さっき言った、「人が交流する拠点を作りたいです!」って話したら、「石垣にそういう場所ないから、それだったらいいよ、安く貸してあげるよ」という形にしてくださいました。

勝さん

あとは、実際に二拠点をやって困るのは、たとえば、美容室、病院、学校など、物理的に通わなきゃいけないところですね。病院だと、島では数も限られてくる。子供が通う学校はどうしよう、ということも考える必要ありますしね。うちの周りで一番すごいのは、夏は奄美、冬は北海道のニセコ、という二拠点をしている小学生がいます。すごいですよね。小学校同士で連携ができているんです。

リトウ部庄司

なるほど。

鯨本さん

最近、私の周りでも、クリエイティブなお仕事をしている東京在住の方で、「東京だけで子育てをしていると大変なので、田舎との二拠点を考えてるけど、具体的にそれは可能なのか」と考えられている人がたくさんいます。

実際、やろうと思えば、割とできるんですよね。東京だと保育園に子どもを入れる時点で難しいんですけど、田舎の場合はスルッと入れます。私が地元(大分県日田市)に移る時は、年度の途中でしたがすぐに保育園が決まって入園できましたし。融通がきく点、田舎はものすごく楽ですね。

ここで離島に話を戻すと、離島地域は本当に子どもが減っているんです。ここ数十年の間で、20%お子さんが減っているので、島にとっても子供は宝。小さなお子さん連れで島に二拠点とかしようもんだったら、それだけでウェルカムですね。

リトウ部庄司

すごい心強い!

鯨本さん

場所によっては一緒に子どもを育ててくれるかもしれません(笑)。私もよく子どもを連れて島に行きますが、仕事中に子ども預かってもらえるサービスがなくて本当に困ったときに島の方に相談したら、島のお母さんやおばちゃんが2〜3時間預かってくれ、遊んでいただいた経験が何島かあります。そういう暮らし方があるので、やっぱり島はいいなあと思います。

ロングステイするなら「食」も意識

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リトウ部鈴木

二拠点の話が中心でしたが、今度はロングステイの話に。だいたい1週間以上ぐらいを「ロングステイ」と定義してみると、島ではどんなロングステイのパターンがあるでしょうか?

勝さん

奄美は花粉が飛ばないので、花粉症から逃れたい経営者の方が「俺は2月から5月までは、奄美にいるから」みたいな感じで仕事をしていたりしますね。

鯨本さん

ロングステイでいうと、単純に「長期滞在がしやすい宿」がキーワードかもしれません。島って、到着までに時間とお金がかかる場合が多いんですよ。例えば小笠原諸島まで行こうとすると、ここから24時間かかりますし。そういう島に行って3泊4日で帰るのはもったいないじゃないですか。でも、2週間ぐらいいれば、アクセスに時間がかかることも気にならない。最近はゲストハウスも増えているので、そういう宿に長期滞在できるといいですね。

リトウ部鈴木

今まで行かれた島で、ロングステイするんだったらここがおススメ、みたいな島はありますか?

鯨本さん

離島といっても400島以上ありますので、「おススメどこですか?」と聞かれても「島で何がしたいか」まで聞かないとお答えできないんです。ものすごくダイナミックな島に行きたいのか、ちょっと都会的なでリゾートで青い海を楽しみたいのかなど......。たとえば、庄司さんだったら島でどんなことがしたいですか?

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リトウ部庄司

あんまり観光っぽくない場所がいいですね。仕事もできつつ、地元の方とコミュニケーションも取りつつ、自然に癒されつつ、みたいな。地元のあったかいおばあちゃんがいたり、すごいきれいなゲストハウスがあるとか、滞在しやすい場所がいいですね。

鯨本さん

長く滞在するとき、小さな島は食が限られて来るっていう問題があるんですよ。本土から遠く離れた小さな島だと、食材があんまり豊富じゃないことも多くて。たとえば、沖縄だと、白菜がひと玉1,000円ぐらいになる島もあるんです。

野菜が貴重で、食べ物も傷みやすい気候の島だと、メニューに揚げ物が多くなることもあり、人によっては飽きてしまうかもしません。

その点、食材の種類が豊富で溢れるほどのお客さんがいるわけじゃない島となると、五島列島佐渡が穴場かもしれません。

勝さん

佐渡、こないだ行きましたけども、カニ食べ放題でした。1,500円ぐらいででっかいカニが3杯。近所の酒屋に行ってお酒買ってきて、「もうカニは無理」というぐらい食べました。

鯨本さん

おそらく、多国籍料理の数が一番多いのは、石垣島だと思うんですよ。南インド料理専門店みたいお店もあるくらい。小さな島だと「魚、飯、以上!」という島もあるので、食にこだわる人でも長くいれる島となると、少し大きい島がおすすめですね。五島列島なら海の幸はもちろん美味しいですし、鶏も、牛も、豚も、野菜も採れますね。

リトウ部庄司

なるほどなあ。五島列島の中で、「働きながら滞在する」と考えると?

勝さん

福江島かな。

鯨本さん

新上五島町にも面白い方もたくさんいますね。

伝泊で島の暮らしを体感

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伝泊 Webサイト

 

勝さん

ロングステイなら「伝泊」もおすすめです。伝泊という、伝統的・伝説的な建物を泊まることで残そう、という取り組みがあります。代表の山下保博さんは奄美出身の建築家。伝統的な建物がどんどん家が空き家になって、朽ちていってしまう中、「伝統的な島の建築の7要素」をいくつか満たしている建物を借りて、内部を改装し、宿泊施設によみがえらせるという取り組みです。

伝泊のミソは、コンシェルジュという方がいて、宿泊のお客様と30分以上話をして、この島にどんなことをしにやってきたのかを聞いたりする。で、たとえばお客様が「魚を獲りたい」ということを言っていたら、地元の人で魚を獲るのが得意な人を紹介してあげたりして。コンシェルジュを地元の人にもちろんやってもらうことで、地元の経済にも成り立ちます。

お客様に説明するために、コンシェルジュ役の人も地元の話を聞いて回るので、地域が豊かになりますね。

現在、伝泊の宿は、奄美大島の北部に7棟で、加計呂麻島(かけろまじま)に2棟。あと、徳之島に6棟あります。

リトウ部庄司

すごい!こういった取り組みが増えているんですね。

勝さん

家主も、家を売るにはまだ勇気がいるけど、このまま放ってい置くわけにはいかない、というときに、我々が5年間借りて内部を改装。5年後にやっぱり家主が自分たちで使いたい、というときはお返しするし、伝泊としてまた5年貸していただけるんだったら、そのあとも続けましょう、ということですね。

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「リリーの家」外観 ※伝泊Webサイトより

「リリーの家」というところは、『男はつらいよ』の中で使われた建物で、浅丘ルリ子さんが住んでいるという設定だった場所。山田洋次監督も毎年来られるそうです。建物だけでなく、集落の人たちとも話ができる、というのもよいところですね。観光のスタイルも、見るだけというものから、地元の人とどれだけ交わるかというところにも価値が置かれてきていますからね。

リトウ部庄司

伝泊の建物改修は、家主から声がかかるんですか?こちらがわで建物を見つけ出すんですか?

勝さん

両方ですね。最初は調査に行きました。うちのスタッフが、元々地域の人なので、「あそこのおばちゃんの家、空いていたよねー」みたいな話を聞いて伺ったりとか。

リトウ部庄司

今後もこれは増える予定ですか?

勝さん

そうですね。奄美群島の他の島々にも増やしていきたいですね。

リトウ部鈴木

やはり、お客さんは長期滞在の方が多いですか?

勝さん

そうですね。あと人気なのは、お子さん連れの方。ドタドタ走っても大丈夫なので、お子さんを連れて、3家族か4家族ぐらいが合同で泊って行ったりします。1人子守り役がいて、その間に他のお母さんたちがバリバリ仕事をしてる、なんて過ごし方もあったりしました。

まずは行ってみて、その島と地域を感じてみる

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 リトウ部鈴木

そろそろお時間になってきました。二拠点やロングステイにチャレンジしたい方に一言ずつ、アドバイスやエールをいただけますか?

鯨本さん

まずは伝泊に泊ってみてください(笑)。交通費があまりかからなくて、アクセスしやすくて、泊まりやすいお宿がある場所は、島への入り口としてはとてもいいと思います。奄美大島は幸いLCCが飛んでいるので、早めに予約をすればけっこう安くアクセスできます。だから、まずは行ってみると良いのではないでしょうか。

勝さん

まず、行ってみて、その地域の感じが自分に合うかどうかを感じてみてください。あとは、島で頼れる人を見つけらると、それが二拠点やロングステイのきっかけになるかもしれませんね。

リトウ部鈴木・リトウ部庄司

ありがとうございました。

 

※クロストークのレポートここまで

前編・後編にわたって、NPO法人離島経済新聞社とBUKATSUDOリトウ部のクロストークの様子をお届けしました。

今回のイベントに参加した、石垣島の高校、八重山高等学校三年の上野優祐(うえの・ゆうや)さんのトークも掲載しております。石垣島ダイバーシティについて、「島の北部地域」「移住者」「コミュニティづくり」の三つのトピックを元に話してくださいました。

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